ひかげ読書

本と漫画と時々色々

「ある夏の日、私は死んだ」 夏と花火と私の死体/乙一

中学一年の時、作家乙一に出会いました。

その頃から私的作家ランキングの不動の一位です。大好き。

 

出会いは「君にしか聞こえない CALLING YOU」ですが、夏だしデビュー作なので記念すべき投稿一作目はこちらにしました。

たしか二作目に読んだのが「夏と花火と私の死体」だったのですが、テイストの落差がえぐくてびっくりしてそのままのめり込みました。次読んだのが「暗黒童話」だったのもまた良かったんだね。完璧沼った。

 

【あらすじ】

小学生の五月と弥生は仲良し。

しかし夏休みのある日、五月は弥生に木の上から突き落とされ死んでしまう。

それを知った弥生の兄の健は五月の死体を隠すことを提案する。

大人たちにばれないように五月の死体を隠すために兄妹は奔走する。

 

【感想】

はじめて読んだときの衝撃よ。散々いろんな人が読んだ感想にあげているが、一人称が死体なんて考えつかないでしょ普通。しかも16歳のデビュー作でこれ。16歳なんて勉強もせずに部活しかしてなかったぞ自分。

一番好きなポイントはいつバレるかのドキドキ感。五月が行方不明となり大人たちが捜索している隙をかいくぐって兄妹は死体を隠したり移動させたりと忙しい。

「いやもう絶対バレますやん」っていうところが多々あるが、今読み直しても中学生だった当時と同じ気持ちで読めるのが最高。

まぁ散々いろんな所で書かれている「腐るだろ」というツッコミは今思えば至極真っ当ですね。クーラーもない古い家の押し入れにゴザでくるまれた死体...。

 

ミステリー慣れしてなかったのもあり、オチは全然読めなかったのでとにかく驚いた。冷静に考えるとサイコパスだらけの作品。健くん絶対いずれ人殺すだろ...。あの人はもう狂ってるからどうしようもないです。

この頃からミステリーやダークに徐々に傾倒していくことになった人生を変えた作品と言っても過言ではない。

死体が主人公とは言ってもグロ描写はだいぶ薄いです。子供の必死さはあるが、死体に対しての恐怖とかはあんまりない。

 

不穏な空気はどちらかと言えば二作目の「優子」のほうが強いかな。

最初読んだときは全然意味が分からなくて何回か読んでやっとその怖さに気づいた。その死に方はかなり嫌です。

 

ページ数は少なめなのに内容はかなり濃密な一冊。

まだ未読な方はぜひぜひ。