「永遠の迷子」 夜市/恒川光太郎
夏なので夏っぽい物をいっぱいあげとこうと思いまして大好きなこちら。
とは言ってもどこも夏祭りも中止中止で大変だ。
地元では6月の毎週末に行われる「夜店」という風習があり、何かを奉っているとかそういうのではなくただただ屋台がずらっと出るだけのイベント。
大学時代にこれを話したらそれは変だと散々言われたがよく考えたら変だな。
というわけで「夜市」です。
【あらすじ】
「夜市」妖怪たちが品物を売る不思議な市場に迷い込んだ兄弟。兄は野球の才能を買うために弟を売った。
「風の古道」人ならざるものたちが古くから使う道に入り込んだ2人の少年。帰ろうとする彼らはレンという旅人と出会う。
【感想】
結構有名な短篇集なのでとても期待して読んだら期待通り。角川ホラー文庫なのでめちゃ怖いものも想定していたが、ホラーというか怪奇幻想小説という感じか?
表題作の夜市も素晴らしいが、自分は風の古道が好き。
古道から出られなくなった上に、ある悲しい事件が起こったために、その解決のために旅を続ける主人公。
とにかく自然描写が綺麗で、最後に残る余韻が素晴らしい。
絶望を感じ決意したシーンはただ切ない。小学生の主人公にこの決断はあまりにも酷であった。
最後の一節はだいぶ心にずしんと来た。成長の物語ではなく、ただの選択した結果。何かを選べば他の選ばれなかった景色を見ることはない。
人生の選択を今まで間違えずに来れたのだろうか。
部活、高校受験、大学受験、就職、結婚。
分岐は自分の責任で決断しないといけないので怖いし苦手だ。
起きていないことに不安を抱くどうしようもない性格なので尚更。
これからも何かを選んで何かを捨てる人生を歩むしかないんだな、みんな。